2010年09月05日

ホメオパシーとNature掲載論文

 先日、日本学術会議がホメオパシーに物申した。「こんなまがいものに手を出してはいけません。」

 新聞でも話題になったのでみなさんご存知でしょう。学術会議がこんなことを言いだすのはかなり異例のこと。しかもその語調は大変厳しい。「荒唐無稽」で「科学的根拠が否定されている」とまで言いきった。

 そもそもホメオパシーって何なん?なんとなく聴いたことはあっても、はっきりこうとはわからない。ひとことで言うと、極限まで希釈した毒物を体に取り込むことによって病気を治すのだという(こちら)。しかもその希釈が尋常でないらしい。

 そんなホメオパシーの話を読んでいて、20年以上前に読んだ論文を思いだした。

 その論文は、私がまだ大学院生の頃Natureに掲載された。タイトルが「Human basophil degranuration triggered by very dilute antiserum against IgE」。

 論文をダウンロードできる人は一度読まれるがよろし。実に興味深く、ある意味バカげている。抗IgE抗体の入った血清を10の-120剰にまで希釈する。これを好塩基球に作用させると脱顆粒を引き起こすというのだ。脱顆粒は、希釈液中の抗IgE抗体が好塩基球表面のIgEと反応して起こるわけだが、しかしこの希釈でははっきりアボガドロ定数を越えている。つまり希釈液には1分子の抗体分子も入っていないはずなのに、脱顆粒が起こるというのである。

 なぜだ?著者は希釈液中の水分子が抗体の形を記憶したのだと考察した。つまり抗体のレプリカ構造が水分子で形成されるというのだ。さらにはこの構造が、まるで結晶が成長するように、溶液中で成長すると考えた。従ってどれだけ希釈してもIgE反応性が残るというのだ。

 しつこいけどこの論文が掲載されたのがNatureである。ウブな私は信じかけた。だってNatureですぞ。でも真実は違ったようだ。

 その後Nature編集部でプロジェクトチームが組まれ、発表者のラボへ立ち入り審査を行った。ラボノートは丹念にチェックされ、チーム立ち会いの下で実験が再現された。面白いことにその現象は再現され、一時は信憑性が確認されたかと思われた。多くのラボが再現実験を試みて、あるラボでは再現できた。しかし1993年には、ほぼ同じタイトルの論文がNatureに掲載された。ただし、内容は先の論文を完全否定するものだった。

 要するに、最終的には否定されたものの、その信憑性を巡って何年もケンケンガクガクと論争が続いたのだ。結局2004年に著者のDr. Benvenisteが亡くなって、ゴタゴタにもなんとなく終止符が打たれた。

==========

 Dr. Benvenisteの論理はホメオパシーを支持するものだった。しかしこれは完全に否定されている。ホメオパシー療法に科学的根拠はない。自分が好きでやる分はよろしい。でも人に施したり、人に勧めるのはイカンでしょ。子供の命まで奪うことになるなんて。

 ホメオパシー。科学の世界でも医療の世界でも、何かと話題になるやつである。



 
【補足】一連のケンケンガクガクに興味のある人、PubMedで検索(検索式:Nature[ta] AND benveniste)すれば記事が出て来ます。

posted by miyake at 19:18| Comment(3) | 研究 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
ホメオパシーは治験を行っていないので、非科学的な偽医療ですよね。
Benveniste論文を信じたとしても、それは臨床における治療法とは、全くかけ離れているので、根拠になりません。

効果があるなら、薬事法上の承認を得るために行われる臨床試験である治験を行い、正規の医薬品として認可されれば良いのだと思います。
Posted by uncorrelated at 2010年09月06日 13:05
コメントありがとうございます。まったくそのとおりです。
この記事はホメオパシーを是認するものではないことをご確認ください。

ただ、科学の世界にも人の心にも、このような非科学的な物事の入りこむ「スキ」がある(あった)のだということを指摘したかったのです。

拙文が誤解を招いたのでしたらご容赦ください。
Posted by みやけ at 2010年09月06日 13:20
ホメオパシー!!ばかばかしいったらありゃしません。
私の精神科の主治医がホメオパシーを採用しています。
ネイチュアに掲載された。治療効果がある。
と言うのでだまってしまいました。

オカルトの一種です。
Posted by 松鷹妙子 at 2016年06月19日 00:10
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